テレビの健康番組などでよく耳にするようになった、プレバイオティクスとプロバイオティクス。
「腸活」や「菌活」の特集では必ず出てくるキーワードです。
今回は、このプレバイオティクスとプロバイオティクスのお話です。
先にヒトについて、その後に鉢植えの植物についての応用的なことを解説します。

プレバイオティクス

プレバイオティクスとは 「消化管に常在する有用な細菌を選択的に増殖させる,あるいは有害な細菌の増殖を抑制することで宿主に有益な効果をもたらす難消化性食品成分」 です。
腸内細菌のエサになる食品や栄養素のことで、オリゴ糖類や,食物繊維類などがこれにあたります。

 

プロバイオティクス

一方,プロバイオティクスとは,「腸内細菌叢のバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物菌体」 のことです。
腸内細菌自体のことで、乳酸菌、ビフィズス菌などを指し、生菌製剤や生菌入りヨーグルトなどがこれにあたります。


米国では、多種多様の土壌菌のサプリメントが市販されています。
(日本でも市販されていますが、米国程の品揃いはありません。)


1つのカプセルに10種類の菌種が50億も含有されているものもあります。
先進国のヒトの腸内細菌は減少の傾向にあります。
土壌菌のサプリメントは、減少分を補充して腸内細菌叢を活性化する働きがあります。

これらの菌たちを摂取しても、大半の菌たちは腸に定住することはなく、2~3日でウンチとなって排出されます。
こうした菌を「通過菌」といいます。

人の腸内に定住せず通過してしまう菌のうち、ヨーグルトやチーズ、納豆などの発酵食品に含まれる乳酸菌や納豆菌などは、通過菌であっても善玉菌の代表であるビフィズス菌を増やす働きをすると同時に、腐敗菌の増殖を抑える働きもあり、腸内環境を整えるのに役立つといわれています。
最近の研究では、体内の免疫系にも重要な働きをしているとの報告もあります。
なにもせずに腸内を素通りするのではなく、重要な使命を帯びているようです。

鉢植えのプレバイオティクスとプロバイオティクス

前述したのは人体に関することでしたが、これを鉢植えにも応用することができます。

わたしの公式では、
「根」=「腸」
「土壌菌」=「腸内細菌」
になります。
そしてプレバイオティクスは、ヒトは食品であり、植物には肥料(厳密には腐葉土や米ぬか)となります。
これはあながち間違えでもなく、多くの学者に支持されています。

プロバイオティクス:植物編

プロバイオティクスとは生きた微生物菌体のこですが、農業や園芸では「微生物資材」と呼ばれることが多いです。
濃縮タイプの液状のものやゲル状、顆粒タイプのものがありますが、肥料のような要領で与えることができます。

「微生物資材」の多くは、菌の種類や含有量などが明記されてなく不安が残ります。
たぶんバチルス属(枯草菌)やラクトバチルス属(乳酸菌)、糸状菌でいえば菌根菌あたりが含有されているのでしょう。

土壌菌の多様性を保つためにも、2~3種類の「微生物資材」を与えたほうが効果が高いです。

水やりのたびに鉢底から流失する菌たちもたくさんいます。
それらの菌たちの補充もかねて、定期的に「微生物資材」を与えるのがベストです。

プレバイオティクス:植物編

プレバイオティクスは、ヒトは食品であり、植物には肥料となります。
化学肥料や完熟堆肥(微生物の食べ滓)は、肥効成分の純度が高く(医薬品やサプリメントと同作用)、土壌中の微生物の食べ物にはなりません。
土壌菌のエサとなる有機肥料でなければなりません。と、
今まではそう思ってましたが、これは間違いだということに気づきました。
肥料は土壌菌のエサではく、植物の食べ物なのです。
では、土壌菌のエサとなるものはなんでしょうか?

ヒトの腸内細菌と同じく「糖類」が土壌菌のエサとなります。
代表的なものは「米ぬか」です。

米ぬか

米ぬかは微生物のエサとなる養分が豊富で、微酸性ですので根にも土壌菌にも安心です。
これを好む有用な微生物たち(乳酸菌や酵母、こうじ菌など)が集まってきて増殖し、米ぬかを施用した土にはそれらが分解した養
分がたくさん貯まります。
作物はその養分を吸収し、健全に生育します。
米ぬかは、米専門店などで新鮮なものを購入しましょう。

木酢液

木酢液も微生物のエサになります。
木酢液とは、木炭をつくる際に生じる水蒸気を冷やし回収した液体のことです。
いわば樹木の濃縮液とも言えるこの木酢液には、有機酸やアルコール、フェノール類、ビタミン、ミネラルなど200種類以
上の成分が含まれてます。
木酢液の原液はpH2.8~3.2と強酸性ですので、1000倍に希釈して土壌に散布します。

植物生理活性液

市販されている微生物のエサです。
微生物資材とセット販売されえいる「瑞宝源」というネーミングのものです。

瑞宝源は動物及び天然有機物を主原料とし、フミン酸、アミノ酸、酵素等を加え、特殊な製法で作られた植物生理活性液です。
豚尿を主体に牛尿フミン酸等を加え微生物により完全醗酵してあります。
菌の補助資材(餌代わり)として微量要素補給や、有機土壌形成にトーマスくんと混合してお使い下さい。
植物にやさしく、確かな土づくりと根張り、作物の健全生育による増収とおいしい野菜づくりに効果的です。

まとめ

「根」=「腸」、「土壌菌」=「腸内細菌」、そしてプレバイオティクスは、ヒトは食品であり、植物には米ぬかや腐葉土、木酢液となります。

古代ギリシアの医者であるヒポクラテスは「すべての病気は腸に始まる」と言いました。
紀元前400年に、現代医学の最先端の真実を言い当てていたのです。

それは「植物のすべての病気は根に始まる」とも言い換えられます。
根が元気だと、病害虫に強くなり、骨太に生長し、美しい花を咲かせたり、おいしい果実をつけてくれます。
その根を元気にするためには、有機物が豊富な土壌に、多種多様の土壌菌が何億何兆と生息してなければなりません。
自然豊かな野山のような土壌に近づけてあげることです。

「人は自然から遠ざかるほど病気に近づく」ともヒポクラテスは述べてます。
現代の日本人の腸内細菌は、戦前のヒトのなんと 1/3 になったと言われています。
行き過ぎたキレイ主義による細菌への無差別攻撃や加工食品、ジャンクフードなどの粗悪食品が原因なんでしょうね。
まさに自然から遠ざかっており、糖尿病や肥満、うつ病、高血圧、アレルギー、パーキンソン病などの厄介な病気が蔓延するようになりました。
これらの病気は、腸と腸内細菌を正常に戻すことにより改善した事例がたくさんあります。

腸と腸内細菌は、免疫系機能、解毒、炎症、栄養の吸収、炭水化物や脂肪をどのように利用するかなど、さまざまな生理行動に作用していることが分かってきたのです。
これらを担う腸内細菌の働きは、アレルギーやぜん息、ガン、糖尿病、認知症などにも強く影響しています。
さらには、気分や性欲、代謝、免疫、認知力まで影響を与えています。
総じて言えば、感情的にも身体的にも、私たちの健康に関することはすべて腸と腸内細菌の状態で決まるのです。

植物に関しても同じことがいえます。
植物の健康に関することはすべて根と土壌菌の状態で決まるのです。