土壌微生物とは、

土壌中に生息する微生物のことで、細菌、放線菌、糸状菌、藻類、原生動物、線虫などが含まれます。

一般的に1グラムの土壌に土壌微生物は、約100~1000万、肥沃な土壌には、約6億匹もの微生物が存在するといわれています。

そのうち約70%がカビ、約25%が細菌と放線菌、約5%が土壌生物とされています。

菌類

カビは菌類の仲間であり、酵母やキノコも含まれます。

カビというと悪いイメージしかありませんが、

カビは生物の不要になった有機物(動物の排泄物や動植物の死骸、落ち葉や朽ち木など)を、無機物に分解する性質を持っています。

無機質に分解されたものを植物が栄養分として吸収するのです。

(植物は有機物を直接吸収することができません。
微生物などが有機物を無機物に分解したものを、はじめて栄養分として吸収できるのです。)

またカビの仲間である酵母や乳酸菌、納豆菌などは人間の食文化に役に立つています。

細菌

細菌は土壌微生物のなかでは最も小さく、通常は1μm(マイクロメートル)前後です。

1mm の1000分の1の大きさですので肉眼では見ることができません。

土壌中において細菌は、空気中のチッ素をアンモニアに変える働きをするものもいます。

アンモニアに変えたものを植物が根から吸収して、とても重要なチッ素養分を得ています。

その一方で細菌は、植物に害を与える「病原菌」としても存在します。

月下美人に多い「すす病」や「赤枯れ病」も「病原菌」が原因です。

放線菌

放線菌は、細菌とカビの中間の性質をもち、土壌中に多く存在します。

農耕地では表土1g当たり10万~100万程度存在するといわれています。

土特有の「土臭さ」は、この放線菌が発生するニオイとされています。

またカビなどの発生を制御する働きをするものもいます。

放線菌のなかには抗生物質をつくるものが多く、感染病を防ぐ医薬品として利用されています。

原生動物

原生動物とは、ミドリムシやアメーバなどの単細胞な動物的な生物です。

これらの原生動物は、さまざまな生物の死骸(がい)をえさとして分解し、二酸化炭素などのガスや水、あるいは植物の生育に必要な養分などに変えてしまいます。

自然界の物質の循環

このように、土壌中の小さな微生物たちは、有機物(動物の排泄物や動植物の死骸、落ち葉や朽ち木など)を分解して、植物が吸収できるようにしているのです。

さらに炭素や窒素、リンなど自然界の物質の循環に、とても大きな役割をはたしています。

チッ素(N)はアミノ酸やタンパク質などに含まれ、生物にとって大変重要な成分です


草食動物は、植物を食べることによりチッ素(N)栄養分をタンパク質として吸収します。
その草食動物を肉食動物が食べてチッ素(N)栄養分をタンパク質として吸収します。

チッ素栄養分がなければ動物は生きていけません。

すべての元は植物で、それを支えているのが土壌微生物です。

微生物と温度と黒土

これらの多くの微生物の活力は、30~40℃の間で最大になります。

これに対し、多くの植物は20~30℃が生育環境として最も適しています。

この違いが、土壌有機物の量に影響しています。

温帯の日本では、植物の生産力が土壌生物の活力よりも大きい地域では、土壌中の腐植が増えるため土壌が黒くなる。

一方、熱帯のように土壌微生物の活力が植物の生産力よりも大きい地域では、腐植が増えないため土壌は黒くなりません。

月下美人の原産地の熱帯雨林では、動物の排泄物や動植物の死骸、落ち葉や朽ち木などはすぐに微生物によって分解されるので、表土の黒い腐植層は数cmしかありません。