今回は肥料の種類や形状、効き方など基本のお話です。
肥料を選ぶ時や購入時の参考にしてみてください。
目 次
1.原料での種類
●有機質肥料
鶏や牛の糞や草木灰、油粕や骨粉など、原料が動植物由来の肥料を有機質肥料といいます。
土壌の微生物に分解されて、初めて植物に吸収されるので、即効性はありません。
しかしそのぶん、いちどに多くを与えても肥料濃度による障害が出にくいメリットがあります。
半面、独特の臭いがあり、有機質をエサにする虫が発生しやすくなります。
有機肥料の特徴
・原料は、植物性または動物性由来の有機物
・肥料の種類によって違いがあるが、全体的に即効性は低く持続性が高い
・銅、亜鉛など、植物の微量必須要素の給源としての効果も期待できる
・利用することで土壌が改良されるメリットがある
・微生物の働きによって分解状況が変わるので、量の調整が難しい
・過程でガスが発生したり、においが強かったりする物もある
・自然の素材を発酵・熟成させて作るので、肥料ができるまでに時間がかかる
・原材料に限りがあるために大量生産は難しく、その分価格は高め
有機肥料の種類
油粕
油粕とは、大豆や菜種などから油を搾った後に残る、搾りかすのこと。
植物に必要な三大栄養である窒素・リン酸・カリウムのうち、葉・茎の生育を促す窒素を多く含んでいるのが特徴です。
油粕は、多量にまくと分解の際にガスが発生して作物の生育を阻害したり、土の表面にまくとコバエが発生したりすることもあるので、使用には注意が必要です。
発酵させたものと未発酵のものがある。
発酵させたものは、ガスの発生が抑えられて、効きも未発酵のものよりは即効性が高まります。
鶏糞
鶏糞は、養鶏所から出るニワトリの糞を乾燥・発酵させた物です。
窒素・リン酸・カリウムをバランスよく含み、マグネシウムやカルシウムも豊富に含んでいます。
比較的低価格で扱いやすく、乾燥鶏糞(鶏糞ペレット)、発酵鶏糞(鶏糞堆肥)、炭化鶏糞などの種類があります。
魚粉
魚粉は、イワシなどの魚を煮て水分と油分を取り除き、乾燥させた後に粉砕したものです。
窒素とリン酸を多く含み、窒素はタンパク質の形であることから、土壌中での分解は速やかに進みます。
有機肥料の中では窒素の即効性が高いため、元肥のほか追肥にも使われます。
骨粉(こっぷん)
骨粉は、豚や鶏などの骨を乾燥させた後、細かく砕いた物です。
多少の窒素と多くのリン酸を含んでいます。
少しずつ分解されて吸収されるため、効果は非常にゆっくりと現れ、長続きするのが特徴です。
米ぬか
米ぬかは、玄米を精米する際に出る粉です。
窒素・リン酸・カリウムのほか、ビタミンやミネラル、糖分も多く含んでいます。
脂質が多いため、油粕よりも分解はゆっくり進みます。
水田では、除草の目的で表面施用されることがあります。
草木灰(そうもくばい)
落ち葉や枯れ草などの草木を燃やしてできるのが草木灰です。
カリウムを多く含むほか、石灰とリン酸も含んでおり、酸性の土壌を中和するためにも使われます。
即効性が高いため、元肥のほか、追肥にも使われます。
●無機肥料質肥料
鉱物などを原料に科学的に合成して作られる肥料で、化学肥料、化成肥料とも呼ばれます。
有機質肥料に比べて臭いが少なく、使用する植物に合わせて栄養成分が配合されたものが販売されています。
しかし、多く与えすぎると、根や植物そのものへの障害が出やすくなります。
無機肥料、化学肥料の特徴
・原料は空気中の窒素や鉱物などの無機物
・全体的に即効性が高く、持続性は低い
・微生物の影響を受けず、植物に吸収されやすい
・臭いやガスが発生しない
・有機肥料のような土壌改良効果 はない
・過剰使用すると「肥料やけ」(根が障害を受け、しおれたり枯れたりすること)が起こりやすい
・工場で大量生産が可能なため、安定した品質のものが安価に手に入る
2.効き方による分類
●即効性肥料
与えればすぐに効果があらわれる肥料ですが、持続性はありません。
液体肥料や無機質肥料などが、これにあたります。
●緩効性肥料
与え始めから効果があり、長期間持続する肥料です。
肥料の表面にコーティングしたものや水に溶けにくい素材を使用したものなどがあり、もっとも用途が広い肥料です。
●遅効性肥料
植物に与えても、すぐに効果はあらわれません。
有機質肥料がこのタイプにあたり、水分や微生物に分解されてから、少しずつ効いていきます。
3.形状での違い
●固形肥料
固形肥料には、土に置く錠剤タイプや混ぜたりばらまいたりして使う粒状・粉状のタイプがあります。
原料が無機質肥料のものは緩効性で、有機質肥料のものは遅効性なのが一般的です。
●液体肥料
無機質肥料を液状にした製品が多く、水で希釈するタイプと、そのまま使用できるストレートタイプのものがあります。
即効性があるので、鉢植えの追肥にすることが多く、小さな容器をそのまま土に挿し込んで使うものもあります。
植物に必要な、肥料の三大要素
植物の肥料といえば必ず登場する成分に、チッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)があります。
この3つは「肥料の三大要素」といわれ、植物を育成していくうえで、比較的大量に必要とする成分です。
それぞれ次のような役目があります。
N:窒素(nitrogenous)
一般的に「チッ素」と呼ばれます。
植物の幹や葉を大きくし、葉色を濃くする作用があるため、別名、“葉肥(はごえ)”とも。
植物体のタンパク質や、光合成のための葉緑素を作るのに欠かせない要素です。
P:リン酸(phosphate)
一般的に「リン」あるいは「リン酸」と呼ばれます。
植物の細胞を構成する成分で、開花や結実にかせない事から、”花肥(はなごえ)”“実肥(みごえ)”といわれています。植物全体のなかでも、特に茎や根の先端に多く含まれています。
他の2要素と違い、多く与えても障害を起こす心配はありません。
K:カリウム(kalium)
一般的に「カリ」と呼ばれます。
カリはカリウムのことで、根や球根の発育を促す作用があることから、“根肥(ねごえ)”といわれます。
植物体内ではカリウムイオンの状態で存在し、常に移動しながら成長の促進を図っています。
また、寒さや病気に対する抵抗力をつけるのにも役立つ要素です。
N-P-K以外に必要な要素は?
植物が育つには、三大要素(N-P-K)以外にも多くの肥料成分が必要です。
三大要素に次いで必要量が多いのは、カルシウム、マグネシウム、イオウの3種類で、それぞれ次のような働きがあります。
カルシウム
植物内の細胞同士を力強く結びつける働きがあり、根の正常な発育には不可欠です。
土壌内ではアルカリ性を示すため、酸性土の中和にも用いられます。
マグネシウム
チッ素同様、植物の光合成に必要な葉緑素の重要な構成成分です。
また、脂肪の生成にも深くかかわっています。
イオウ
植物体中の酸化還元や成長の調整など、生理作用にかかわりがあります。
植物体のタンパク質を作るアミノ酸のなかにはイオウが欠かせないものがあり、不足すると発育不良を招きます。
そのほか、ごく微量ながら生育に欠かせない要素に、鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、モリブデン、銅、塩素の7種類があります。
これらの微量要素が不足すると、葉の変色や変形などを起こします。
最後に
有機肥料・化学肥料と聞くと、生物由来の素材から作られている有機肥料のほうがいいと思いがちですが、有機肥料は即効性が低く持続性が高い、化学肥料は持続性が低く即効性が高いと、性質が異なりますのでどちらが良いというものではありません。
例えば、元肥には有機肥料、追肥には化学肥料を使うなど、それぞれの特徴を踏まえた上で使い分けることをおすすめします。
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