はじめに

「月下美人を育てているのですよ」と話しかけると、返っくる言葉は決まってます。

「育てるのってムズカシイでしょう」
「苗や株は、どこにも売ってないんでしょう」
「1年にいちどしか咲かないんでしょう」

これが先入観となっており、月下美人を育てるのを躊躇(ちゅうちょ)される方がたくさんいます。
これはとても残念なことです。

ちょっと誤解を解いていきますと、

「育てるのってムズカシイでしょう」ですが、
月下美人の生育の適温度は25℃前後、適湿度は60%前後です。
これならば、初夏~初秋までは屋外で、それ以外は室内で栽培することが可能です。

四季のある日本で育てるポイントとしては、

①冬季間の寒さ対策
②真夏の猛暑期の暑さ対策
③梅雨時期の雨対策

の3つが挙げられるとともに、これが原因となって枯れることが最も多くなっています。
この3つのポイントを押さえて、用土と肥料、生育環境を整えてあげれば、園芸ビギナーでも育てることができます。

「苗や株は、どこにも売ってないんでしょう」ですが、
昔は知人や近所のひとから挿し木を譲り受けるしかなかったですが、
いまでは、ネット通販で簡単に大株を購入できます。


※参考写真(オススメする店舗ではありません、あくまでも参考程度)

あまりオススメはしませんが、ネットのフリマでも購入できます。
ホームセンターや園芸店でも、たま~に売っているときがあります。

「1年にいちどしか咲かない」という噂がまことしやかに流布してますが、そんなことはありません。
株が元気に大きく生長すれば、4~11月の間に数回開花します。
しかも一度に数多くの花を咲かせることもあります。

夜の7時ぐらいからツボミがほころび出して、11時ぐらに満開を迎えます。
深夜の3時ぐらには萎(しぼ)みだして、明け方には完全に萎んでしまいます。
「一夜限りの儚なさ」と言われていますが、これはホントですよ。

これで月下美人を育てるハードルが、かなり下がったでしょう?

それでは具体的な育て方をみてみましょう。

月下美人の育て方

用土

月下美人に最適な用土の条件は、
①通気性と排水性が高い
②保水性もそこそこ良い
③弱酸性(ph6.0~6.5)
の3つになります。

この条件を満たす用土を手に入れるには、
①市販の月下美人用の用土を購入する
②用土資材を個別に購入してブレンドする
かのどちらかになります。

市販の月下美人用の用土を購入

残念ながら月下美人用の用土は販売されていません。が、
それに近いものがいくつかあります。

プロトリーフ「シャコバサボテンの土」5リットル
価格 750円前後(税込み)
原料 赤玉土/鹿沼土/ピートモス/ココヤシピート/バークたい肥/もみがらたい肥/くん炭/パーライト 等
重量 2.0kg

有機物を含んだ培養土タイプのものですので、菌根菌や土壌微生物との相性もよくオススメの逸品です。

 

花ごころ「シャコバサボテンの土」5リットル
価格 770円前後(税込み)
原料 軽石/パーライト/バーミキュライト/木質堆肥

小砂利・砂タイプのもので、リン酸成分の多い緩効性肥料が配合させれています。
有機物をあまり含まないので、ニオイやコバエ、カビなどの発生もしずらく衛生的です。
その反面、菌根菌や土壌微生物には、あまり適さないものとなってます。

用土資材を個別に購入してブレンド

赤玉土や腐葉土などの用土資材や土壌改良資材、堆肥などを購入しブレンドします。
初心者でも手軽に最適なものが作れますので挑戦してみてください。
(ブレンドの比率は容積比です。重量比ではありません。手でひとづかみ分を1と考えて計量してください。)

繁殖業者秘伝ブレンド

園芸用培養土(黒土)5・赤玉土5

繁殖業者さんから教わった秘伝のものですが、ものすごく簡単で安価です。
園芸業は薄利多売のところが多いので、いかに経費をかけずにイイものを作るかを模索しています。
その結果、出来上がったのがこのブレンドです。
この用土は汎用性が高く、ほどんどの植物に用いることができるそうです。

アイリスオーヤマ 「GRBA-5 ゴールデン粒状培養土」5L
価格 310円前後(税込み)

大宮グリーンサービス「プレミアムソイル 赤玉土 小粒」 2L
価格 217円前後(税込み)

※ここで紹介した商品は、参考程度で掲載しました。

オリジナルブレンド

赤玉土(小粒)5・腐葉土3・鹿沼土(小粒)1・牛フン1

これはサボテン用にブレンドしたものを基にして、月下美人用に改良したものです。
ですので、トゲトゲのサボテンやクジャクサボテンにも適応してます。
このブレンドで重要なのは、腐葉土の選び方です。

自然思考「100%北海道産十万年腐葉土」 20L
価格 766円前後(税込み)


これは黒土に近いもので、葉っぱの大きな欠片は見当たりません。
保水性は高く、通気性と排水性もそこそこあります。
水やり後に乾燥すると固くなるのが欠点です。

大宮グリーンサービス「完熟手作り腐葉土 」40L
価格 946円前後(税込み)


こちらは葉の欠片がはっきりと残っているタイプです。
通気性と排水性は抜群ですが、保水性はかなり低いです。
スカスカなので、入れ過ぎると株の自立性が悪くなります。

ですので、この2つのものをブレンドして使っています。
十万年腐葉土 7:完熟手作り腐葉土 3
の割合ぐらいで、株の大きさに合わせて微調整します。

※ここで紹介した商品は実際に使用しています。

プロトタイプ777

「最強の用土作りプロジェクト」より作り出された、月下美人やクジャクサボテンに最高なオリジナル用土です。

プロトタイプ777は、根と菌根菌、土壌微生物に最高な環境を提供することをコンセプトに開発しました。
そのためプロトタイプ777の性能を発揮させるには、肥料の選択がとても重要になってきます。
菌根菌や土壌菌などの微生物資材も与えなければなりません。

材料A ココヤシビート 2:ピートモス 1:バークたい肥 1:くん炭 1:ゼオライト 1:牛フン 1
まず、上記のものを混ぜ合わせます。
ビートモスは、用土がph 6.0~6.5 になるように調整して入れます。
できれば土壌酸度 pH計を用いてください。

シンワ「土壌酸度 pH計」
価格 3,100円前後(税込み)

材料B 十万年腐葉土 7:完熟手作り腐葉土 3
大きな株のときは、締まった用土にするために十万年腐葉土の割合を高くします。
完熟手作り腐葉土の割合を大きくすると、保水性が悪くなるので土がすぐに乾いてしまいます。
あなたなりの最良のブレンド割合を見つけ出してくださいね。

材料A 2:材料B 1
材料Aと材料Bを混ぜ合わせて完成ですが、この割合も、あなたなりの最良のブレンド割合を見つけ出してくださいね。

月下美人の肥料

肥料は大きく分けると、
化学肥料(化成肥料)
有機肥料
になります。
どちら良くて、どちらが悪いとかはありません。
株の状況をみて使い分けていくのが賢い使い方です。

化学肥料(化成肥料)

基本的には、この2つの液肥があれば十分です。
市販の「シャコバサボテンの土」には化学肥料が向いています。

ハイポネックス ハイグレード原液 180ml
価格 540円前後(税込み)


アミノ酸・ビタミン・高純度天然糖質(トレハロース)配合
チッ素 :リン酸: カリ = 7:10:6

生長期に与えます。(花期の1ヶ月前を除く)

ハイポネックス ハイグレード開花促進 180ml
価格 570円前後(税込み)


ビタミン・高純度天然糖質(トレハロース)配合
チッ素 :リン酸: カリ = 0:6:4

花期の1ヶ月前から与えます。

有機肥料

有機物が入っている用土やオリジナルブレンドの用土向きです。
土壌微生物(土壌菌)のエサにもなりますので、菌たちが増殖して土と根のコンディションが上がります。

東商 「スーパーI 560cc」
価格 1,100円前後(税込み)


精選された有機質原料(油かす・魚粉・米ぬかなど)を 東商独自の特殊醗酵菌により醗酵させ液体化したもの。
チッ素 :リン酸: カリ = 4.5:4.5: 3

通年、これだけで十分です。

微生物資材

ヒトの腸に腸内微生物がいるように、根にも菌根菌や土壌菌、微生物が必要なのです。
根と菌根菌や土壌菌、微生物との共生は、太古の昔より脈々と続いてます。
これを鉢の中で再現しようと試行錯誤を続けてきました。
微生物は目に見えないので存在しているのかどうかも分かりません。
顕微鏡もないので調べることができません。
微生物資材がホントに効いているかは実証できませんが、
比較実験をしてみて効果の高かったものを選んでみました。

バイオ・グリーン 「トーマスくん」1L
価格 3,200円前後(税込み)


好気性及び嫌気性肥効を軸とした60種余りの微生物群からなり、主なものに放線菌・窒素分解固定菌・光合成菌等の有効微生物のみバランス良く組み合わせた人畜無害・無臭の「生きている」液体土壌改良剤。

サンビオティック 「菌力アップ」2L
価格 1,925円前後(税込み)

250種類もの好気性土壌微生物を配合した土壌改良資材。
有機物を強力に分解する土壌善玉菌や、植物の生育を強くする微生物を厳選して配合。
土壌環境を改善し植物の健全な発根を促す。

BICOM VA菌根菌 100g
価格 1,700円前後(税込み)

VA菌根菌は根の活力を高めて生長を促す善玉菌。
「VA菌根菌」が根と共生し、菌糸を広げ、根に栄養分を与える。
病気の予防につながり、乾燥にも強くなる。
何より花や実の生長を促し、健康に育てることができる。

プロトリーフ 有機元肥「元肥の匠」 600g
価格 1,400円前後(税込み)

草木・野菜・バラなどあらゆる植物に使用可能。
24種類の微生物の働きで連作障害を軽減し、豊かな土に改善。
菌根菌の働きで、減化学栽培、減農薬栽培を実現。

使い方としては、
「BICOM VA菌根菌」と 「元肥の匠」 は、植替えの時に元肥えのように鉢に入れます。
また「元肥の匠」 は、1ヶ月に1回ぐらい鉢の表土に撒きます。
「トーマスくん」と「菌力アップ」は、1ヶ月に2回ぐらい希釈して与えます。

※微生物資材は理論上、有機物タップリの用土やプロトタイプ777で効果を発揮します。
有機物の少ない用土や砂や小砂利タイプの用土では、効果が出ないときがあります。

鉢の選び方

プラスチック製の鉢がお勧めです。
手入れが楽で壊れにくく軽いので使い勝手がイイです。
もちろん素焼き鉢や陶器鉢でも構いませんが、鉢の表面に白カビが生える時があります。
通気や排水性がプラスチック製より良いとされてますが、育成にはさほど影響はありません。

プラスチック製のスリット鉢


通気性や排水性に優れ、根がサークリングしにくくなります。
サークリングとは、根がぐるぐると渦を巻いている状態です。
なぜこの状態が良くないかというと、効率よく根を張れていないからです。
植物の根は、水を吸い上げる為に伸びていきます。
この長く無駄に伸びた根が絡まる事で、植物が効果的に水分を吸収できなくなるのです。
スリット鉢の横のスリットから土の中に光が入る事でサークリングせずに効率よく根を張ることが出来ます。
この自然な伸び方だと中心部に根が綺麗に生え、植物には非常に良い環境になります。
これは植替えのときにハッキリと分かります。
また通気性がよいことにより、土壌微生物の活性もよくなります。

スリット鉢には、鉢底石や鉢底ネットはいりません。
「スリットから土がこぼれ出るのでは?」と思われる方が多くいますが、実用上、気になる程はこぼれません。

水やり

月下美人はサボテン科の植物なので、基本的には乾燥気味で育てます。が、
多肥多水にも適応性があるので、これを踏まえて最適なタイミングで水やりを行います。

 

生長期である春~秋にかけては、土の表面が乾いたら水やりをします。

水は鉢底から流れ出るぐらいの水量でたっぷり与えます。
土の中には根からの排泄物や二酸化酸素が溜まっています。
それを流し出す要領で、鉢底から流れ出るくらいたっぷり水を与えます。
そうすることにより新鮮な空気も土の中に取り入れられます。

最生長期(気温が25℃前後で晴れの日が続くとき)は、水やりの頻度を少しだけ多くしてあげます。
これが生長を早めるコツです。
1週間に1回分多く与える要領で行います。
(たとえば、週2回の頻度で行っていたら、週3回にしてみる)
最生長期が終わったら、生長期の水やりに戻します。

冬季間は、土が完全に乾いたてから水やりをします。
たっぷり水を与えるのではなく、土の表面が湿る程度にします。
水やりの頻度は、月に2~3回程度で大丈夫です。
日の当たる暖かい部屋(20℃以上)で育てられているときは、土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをします。

肥料(施肥)

基本的には、元肥えや置肥は与えません、液肥で十分です。

生長期には、チッ素とリン酸、カリウムがバランス良く配合されたものを施肥します。
花期の1ヶ月前からは、リン酸が多く含まれた開花促進用の液肥を与えます。

冬季間は肥料は与えません。
ただし、日の当たる暖かい部屋(20℃以上)で育てられているときは、通常通りに施肥します。

有機物タップリの用土で育ているときは、
有機肥料の液肥のものを与えます。
化成肥料を与えても問題ありませんが、与えすぎると根と菌根菌や土壌菌との共生がなくなることがあります。

季節別管理ポイント

《 春 》

日光管理
春は月下美人の成長期です。日当たりがよく、風通しのよい場所に置くようにしましょう。
窓越しに直射日光が当たるときは、レースカーテンや簾で遮光しましょう。

水やり
晴れた日に行います。目安としては月に1~2回ほどで、土が乾燥したときが水やりの合図です。
晴天が続き、本格的に暖かくなり始めたら2週間に1回のペースで水を与えます。
春は月下美人の成長期なのでたっぷりと与えるようにしましょう。

植え替え
成長期の春は植え替えに適した時期です。植え替えは晴れた日に行い、雨の日や日差しが強すぎる日は避けるようにします。

《 梅雨 》

日光管理
湿気に弱いので、風通しがよく、日当たりのよい場所に置くようにします。
屋外で育てている場合は雨に直接当たらないように注意が必要です。

水やり
梅雨は水やりが難しく、サボテンが体調を崩しやすい時期です。
梅雨は湿度が高く土が乾きにくいため、晴天が続く日の晴れた日に少量の水を与えるようにします。
水やりは春より控え、やり過ぎに注意しましょう。

屋外でサボテンを育てる場合は、ビニール袋を被せるなどして雨よけをするのがおすすめです。
サボテンは湿気に弱いので、本格的に梅雨入りしたら室内に移動してあげましょう。

植え替え
植え替えには適していません。
サボテンは湿気に弱いため、この時期に植え替えをすると根腐れを起こします。
植え替えは5月の梅雨入り前までに済ませるか、9月から11月までに済ませるかのどちらかにしましょう。

《 夏 》

日光管理
カーテンのレース越しに置くなどして遮光しましょう。
夏に直射日光を当てると葉が焼けて枯れてしまう「葉焼け」を起こしてしまいます。
「葉焼け」の原因は、葉の急激な温度上昇による組織の死滅です。
いきなり日光を当てると必ず「葉焼け」を起こすので、日光を当てるときは当てる時間を徐々に長くするなどしてゆっくりと光に慣れさせ、強すぎる日差しに長時間当てないように注意しましょう。

水やり
朝または夕方に少量の水を与えるだけで十分です。
真夏はサボテンの成長が緩やかになるので、春・秋ほど水を必要とせず、回数としては月に1~2回程度で問題ありません 。
土の表面が乾燥してきたら2~3日空けて水を少量与えます。
日差しの強い日中に水を与えると、水分が鉢の中で温められて根腐れしたり株が蒸れたりするので、くれぐれも日中に与えないようにしましょう。

植え替え
できないこともないですが、成長期の春と秋が最も植え替えに適した時期です。
夏はサボテンが休み、成長が止まる時期なので、植え替えを急ぐ必要はありません。

《 秋 》

日光管理
レースカーテン越しに置くなどして遮光するのが望ましいです。
日光に当てる際は、徐々に当てる時間を長くするなどして少しずつ慣らしていきましょう。

水やり
回数でいえば、月に1~2回の水やりで大丈夫です。
土が乾燥したら水やりの合図です。
秋はサボテンの成長期なのでたっぷりと水を与えましょう。
気温が下がるときは水やりの回数を減らします。
屋外で育てる場合、霜が降らないように注意が必要です。

植え替え
春同様、成長期なので植え替えに適しています。

《 冬 》

日光管理
冬だけは日光に当てるようにします。
サボテンの種類にもよりますが、基本的にサボテンは寒さへの耐性が備わっています。
出窓やベランダなど風通しのよい場所に置きましょう。
夜間は0度以下になりそうな場所は避けるようにします。
また、寒さに弱いメロカクタス属やユーベルマニア属などのサボテンは温度を5度以上に保つ必要があります。

水やり
冬はあまり成長しないため、ほとんど水やりは必要ありません。
秋から冬の初めにかけて徐々に水やりの感覚を空けていき、冬は3~4週間に1回のペースで水を与えるようにしましょう。
与えた水が凍結する恐れがあるときは、完全に水やりを止めても構いません。

植え替え
失敗の恐れがあるのでおすすめできません。植え替えは春か秋に行いましょう。